社会のありかたを探る

社会のありかたを探る

「人間」というのは、「人の間」と書くように、私たちは人々の中で生きていく、社会的存在です。宮沢賢治が「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と書いたように、また、リチャード・ウィルキンソンとケイト・ピケットの研究が「格差が大きい社会ほど、健康問題や社会問題が大きくなる」ことを示しているように、格差や貧困の問題や、社会の中での互いへの信頼や支え合いといった社会関係性資本も、幸せにとって大変重要であるとともに、経済のあり方によって大きな影響を受けます。

日本など先進国で人口減少・高齢化の進む中で、どのような社会を構築していく必要があるのでしょうか? どのような暮らし方や働き方がありうるのでしょうか? ここでは、「これまでどおり」ではない、新しい社会のカタチや人々のあり方について考えていきます。

エネルギーと社会

2011年3月に起きた東日本大震災と東京電力福島第一原発事故は、わたしたちに"コンセントの先に思いをはせる"という大きな気づきをもたらしました。エネルギーについて考えることは、私たちが「これからの暮らし」にどのような「豊かさ」を望むのかを考えることでもあります。

国のエネルギー・資源戦略

電力の自由化がはじまり、私たち市民は、以前よりも積極的にエネルギー問題に関われるようになりました。わが国のエネルギー戦略に関連する情報は、資源エネルギー庁のホームページで得ることができます。石油、電力、ガスをはじめ、新エネルギー(原子力、太陽光、風力、スマートコミュニティ等)に関する国の政策や、統計データ、有識者による審議会の記録なども見ることができます。

経済産業省:資源エネルギー庁のホームページ

資源エネルギー庁 総合エネルギー調査会「基本問題委員会」の記録(平成23~24年、弊所長・枝廣 淳子が委員として参加)

「日本のエネルギーの選択肢」 枝廣 淳子(平成24年11月)

地域のエネルギー/市民の対話

原発問題やダムの開発など、エネルギーの問題は地域の経済や社会にもたらす影響が大きく利害関係が複雑なため、これについて議論する時、人は「賛成派か、反対派か」といった対峙する考え方でとらえがちです。しかし、実のある合意形成をめざすためには、多様な意見に対して「敵・味方」として考えるのではなく、相手の視点に立って視野を広げてみる考え方が必要です。

福島第一原子力発電所の事故は、全国各地の原発立地地域にも大きな影響をもたらしました。世界的最大規模の原子力発電所を有する新潟県柏崎市もその一つで す。地震や発電所の事故があるたびに、地域経済や市民はその影響を受けてきました。このことを踏まえ、柏崎市は、将来的には、原子力発電所に大きく依存し なくてもよい経済産業構造の構築を目指し、これからのまちづくりを検討する事業に2012年から取り組んでいます。

原発賛成派・反対派・中立派がはじめて 一堂に会する場が設けられ、立場を超えた対話と地域の未来に向けた共創の取り組みについて、ホームページでご覧ください。

柏崎市「明日の柏崎づくり事業」

地域の地産地消・再生可能エネルギー

2012年7月に固定価格買取制度(FIT)が導入され、再生可能エネルギーが急成長しました。太陽光をはじめ、地熱エネルギー、風力発電、小水力発電など、まだまだ可能性を秘めたエネルギーが地域に眠っています。2015年、雑誌『通販生活』の「枝廣淳子が見に行く ニッポン再エネ大国への道」という連載を通じて、実際に地域で進むエネルギー革命について取材しました。

雑誌『通販生活』の「枝廣淳子が見に行く ニッポン再エネ大国への道」

2050年視点でのエネルギー政策を考える

パリ協定の「2050年の温室効果ガス80%削減」を達成するエネルギー政策に向けて、あらゆる可能性を議論し、産業・技術革新、海外の情勢などを勉強する場として、2017年8月~2018年3月まで経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」が設置され、枝廣もメンバーの一人として参加しました。

設置の根底にあるのは、「現在のエネルギー政策や、従来の議論の延長上では、パリ協定はとても到達できない」という国の問題意識だと考えられます。現状の延長線上にない、不連続の未来を創り出すために、何を知っておく必要があるのか、何を考えるべきなのか。

望ましいエネルギーの未来を創り出すためには、専門家だけに頼るのではなく、私たち一人一人が知り、考え、議論し、発言することが何よりも大事です。
そこで、懇談会の情報をできるだけわかりやすくお伝えし、みんなで考え、議論するきっかけを提供したいと考え、ウェブサイトを立ち上げました。

エダヒロの「エネルギー情勢懇談会」レポ!

出典:岩波書店「世界」別冊 no.907 2018年4月号
「2050年エネルギー情勢懇談会」に参加して(前編)
「2050年エネルギー情勢懇談会」に参加して(後編)


新しいライフスタイルや価値観

広がる「三脱」と「シェア」

「買わない消費者が増えている」といわれています。まさに「三脱の時代」。「三脱」とは「暮らしの脱所有化」、「幸せの脱物質化」、「人生の脱貨幣化」のこと。モノは所有するのではなくシェアで、幸せを物ではなく自然やつながりに求める、そして自分の人生のすべてをお金を得る時間に捧げるのはどうなのだろう・・・という考え方です。

所有せずにシェアする、というスタイルはこの10年で欧米を中心にあっという間に広がり、シェアリングエコノミーサービスは先進国各国で市場を拡大しています。これまでのようなの経済成長を前提とすることができなくなりつつある中で、所有しない新しいライフスタイルを選ぶ人が増えてきました。

自分の時間の半分で、農業を行う暮らし方「半農半X」

21世紀の生き方、暮らし方として、「半農半X(エックス=天職)」というコンセプトがあります。自分の時間の半分で農業を行い、自分や家族の食べ物を作り、残りの時間で自分のやりたいこと(天職)をやって多少の現金収入を得て、農業では得られないものを買う。半農半作家や半農半NGO職員、半農半歌手の人もいます。食料・資源・エネルギー問題がますます深刻化することが予想される時代、"半農"は持続可能な社会を創る上でとても重要な生き方になるでしょう。そしてもう半分の"X"は皆さんそれぞれが持っている天職を見つけることでもあります。皆さんにとっての"X"はなんですか?

半農半X研究所・代表 塩見 直紀氏へのインタビュー(聞き手・枝廣 淳子)

貧困・格差

日本は「一億総中流」といわれた時代もあり、社会の中での格差は小さいと考えられてきました。しかし、そうではない状況が生じ始めています。厚生労働省の調査によると、いま日本では6人に1人の子どもが"貧困状態"にあるといわれているのです。多くの人が「日本や自分とは関係のない問題」だと思いがちな貧困や格差の問題について、まずはデータを読み現状を知ること、そして自分たちにもできる取り組みを進めていきます。

ジニ係数でわかる、日本社会に広がる「格差」
先進国でも特に「相対的貧困率」の高い日本 (先進国30ヶ国中・4位) GDPを増加させても「相対的貧困率」は解決しない

アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェアは「動物たちは生まれてから死ぬまで、その動物本来の行動をとることができ、幸福(well-being)な状態でなければならない」という考えを背景として欧米で誕生しました。「動物福祉」と訳されることもありますが、 最近ではカタカナのまま使われることが増えています。

例えば、日本では、ほとんどの採卵鶏(卵を産むために飼育されている鶏)は、 「バタリーケージ」と呼ばれるおよそB5サイズほど大きさの檻に閉じ込められたまま一生を過ごします。また、豚肉用の子豚を産むための母豚の多くも、妊娠ストールとよばれる檻の中で身動きが取れない状態に置かれています。

アニマルウェルフェアは、こうした近代畜産の現場で、家畜をできるだけ自然に近い形で飼育しよう、という取り組みです。動物たちも意識があり、痛みや苦しみを感じます。家畜が食肉として私たちの食卓に上がるまで、その過程の痛みや苦しみを減らすことは、私たち自身にとっても大事なことではないでしょうか。 また、生産効率を最大化しようとする過密飼育では、病気の感染を防ぐために抗生物質などが投与され、人間の健康への影響の心配もあります。

アニマルウェルフェアへの取り組みが進んでいる欧米などでは、バタリーケージや妊娠ストールを禁止している国も増えており、スーパーなどでもより自然に近い形で飼育された卵や肉を選んで買えるようになっています。

日本は欧米と比べると取り組みが遅れているのが現状で、2020年の東京オリンピッ ク・パラリンピックの選手村などで提供される食料のアニマルウェルフェアの基準は、ロンドン五輪やリオ五輪よりも低い水準になることが懸念されています。

それでも、日本でも少しずつ関心を持つ人々が増えてきました。家畜のウェルフェアに対する消費者の意識や関心が高まり、アニマルウェルフェア対応の卵や肉類などを提供する農家や企業が増えていくことを願っています。

岩波書店『世界』no.896 2017年6月号「私たちの食べている卵と肉はどのようにつくられているか―世界からおくれをとる日本」(前編)

岩波書店『世界』no.896 2017年6月号「私たちの食べている卵と肉はどのようにつくられているか―世界からおくれをとる日本」(後編)

9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」 ~消費者の意識と行動が企業の動物福祉の取り組みを変える~

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『アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全』
(枝廣 淳子/岩波ブックレット)
 

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