経済成長を考える

技術だけでは解決できない

技術の進歩によって、「GDPなど経済規模が増えても、環境負荷は増やさない」(デカップリング)が可能だから、「心配せずに、経済成長してもよい」とよく言われます。

確かに、売上げ100万円あたりのCO2排出量や、床面積100平方メートルあたりの水使用量など、原単位を改善することによって、「相対的なデカップリング」は可能です。相対的なデカップリングとは、「環境負荷の増大率を、経済規模の成長率よりも低く抑える」ということで、経済が大きくなっても、同じようには環境負荷は増えません、ということです。

しかし、持続可能な経済を実現するためには、相対的なデカップリングではなく、「絶対的なデカップリング」が必要です。「絶対的なデカップリング」とは、経済規模が成長しても、環境負荷の絶対量は増えない、または減っていく、ということです。

実際に、この数十年間、技術の進歩により、相対的なデカップリングは実現されているところもありますが、いくら原単位を改善しても、経済成長するかぎり、絶対量は減るどころか、増えていきます。技術革新で燃費が改善しても、走行距離が増え続ければ、結局、ガソリン代やCO2は増えてしまうのと同じです。

「技術の進歩によって、無限の経済成長は可能だ」という人もいますが、経済の生産プロセスを支配している熱力学の法則によると、あらゆる生産は、質の高いインプットを必要とし、質の低いアウトプットをもたらします(いっぱいの世界(full world)の中での経済のあり方をご覧下さい)。

熱力学の法則から、私たちは100%の効率を達成することはできないこともわかっています。効率の限界に達したら、それでも経済を成長させる唯一の方法は、より多くの自然資本(エネルギーを含む)を用いることですが、自然資本の量にも限りがあります。

使われる原材料やエネルギーの絶対量を減らすための技術であれば役に立ちます。原単位を改善する技術も大事であり、必要ですが、それだけでは問題解決にならないのです。

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