フレキシキュリティ
フレキシキュリティとは、柔軟性を意味する「フレキシビリティ」と、保障を意味する「セキュリティ」とを合わせた造語です。労働市場の柔軟性(フレキシビリティ)を推し進めると同時に、生活の保障(セキュリティ)を強化するという考え方で、デンマークの事例がよく知られています。また、欧州委員会は2007年に「フレキシキュリティ共通原則」を欧州雇用戦略としています。
この「柔軟性」と「保障」のバランスは国により変わりますが、デンマークのフレキシキュリティ政策では、企業は労働者を解雇しやすくなるものの(労働市場の柔軟性)、労働者は失業しても生活が保障され(生活の保障)、新しい仕事につけるように再教育や再訓練を受けることが出来ます(積極的労働市場政策)。この労働市場の柔軟性、生活の保障、積極的労働市場政策は「黄金の三角形」とよばれています。
この「ある職業で解雇された労働者が、訓練を受け新たな職業に就く」という流れは、衰退していく産業から新たな成長産業へと労働者を移行させていく助けになるため、産業構造の変化にも対応しやすくなります。またこの政策を、労働者がよりよい仕事を求めたり、能力を発達させる手助けをするものと捉えることも可能です。
□参考
・神野直彦著, 2011, 『「分かち合い」の経済学』, 岩波新書
・若森章孝, 2009, 「フレキシキュリティ論争とデンマーク・モデル」, 関西大学『経済論集』(59)1