注目の取り組み事例

ホーム > 注目の取り組み事例 > 新たな経済システムについての考察

Case.29

新たな経済システムについての考察

(デモクラシー・コラボラティブより)

非営利研究団体「デモクラシー・コラボラティブ」は、現代社会が抱える経済格差や人種的不公平、気候変動などの問題の解決を目指して、システムの転換を図る「ネクスト・システム・プロジェクト」に取り組んでいます。新たなシステムを考察する論文の中から、経済に関わる六つを紹介します。


The Joyful Economy(喜びの経済)
ジェームズ・グスタフ・スペス著
https://thenextsystem.org/the-joyful-economy

ジェームズ・グスタフ・スペスは国連開発計画(UNDP)の元総裁。気候変動や環境破壊をもたらしてきた利益や生産、権力ではなく、誰もが幸せを享受できる、人や場所、地球を優先する経済が必要だと説いています。環境主義に重点を置き、新たな政治経済システムを提案しています。
(この考え方のキーワード:気候変動・環境破壊、ハピネス、人・自然のコミュニティ)


The Economy for the Common Good(共通善のための経済)
クリスチャン・フェルバーほか著
https://thenextsystem.org/the-economy-for-the-common-good

オーストリア人の作家、クリスチャン・フェルバーが提唱する経済モデル「共通善のための経済」は、欧州や南米の多くの企業や大学、自治体で採り入れられてきました。利益の最大化や市場独占を止め、人間の尊厳や社会正義、持続可能性、民主主義を含めた経済システムへの移行が狙いです。
(この考え方のキーワード:エシカル市場経済、新たな経済指標、エシカル金融、エコロジー、教育)


Cultivating Community Economies(コミュニティ経済を育む)
J・K・ギブソン=グラハムほか著
https://thenextsystem.org/cultivating-community-economies

「コミュニティ経済」という言葉は一般的に「地域の経済活動」などと解釈されていますが、本論文では、「人間や人間以外の生物の相互依存をうまく働かせる進行中のプロセス」という意味で使われています。経済の多様性や現在実行されているエシカルな経済活動を取り上げ、どのようにコミュニティ経済を構築するかについて考案しています。
(この考え方のキーワード:多様な労働、富の配分、エシカル市場、共有資源)


Towards a New, Green Economy(ニュー・グリーンエコノミーに向けて)
ティム・ジャクソンほか著
https://thenextsystem.org/towards-a-new-green-economy

英国政府の持続可能な発展委員会の委員長を務めた経験があり、書籍『成長なき繁栄』を著したティム・ジャクソンが描くグリーンエコノミーは、「個人とコミュニティの繁栄」を第一の目標に据えています。マクロ経済の観点から、グリーンエコノミーへの転換のカギとなる企業の役割や仕事の質、投資の構造、貨幣経済の本質などについて論じています。
(この考え方のキーワード:環境コスト、新たな経済指標、地域エネルギー、エシカル金融)


Well-being Economy: A Scenario for a Post-growth Horizontal Governance System(幸福の経済:ポスト成長における水平型統治システムのためのシナリオ)
ロレンツォ・フィオラモンティ著
https://thenextsystem.org/well-economy-scenario-post-growth-horizontal-governance-system

南アフリカの政治経済学者、ロレンツォ・フィオラモンティは、現在の経済構造は国内総生産(GDP)で経済を測ることで公式経済活動(ショッピングモールや大規模農業、大型インフラプロジェクトなど)だけを承認し、非公式や非貨幣の経済活動(家族経営の会社や露天商、小規模農業、家族や地域のために働く無償労働など)を無視していると考えています。彼が提唱するのは、人々が協働し、起業家精神のイニシアティブによって生まれる繁栄に基づく経済です。
(この考え方のキーワード:地域通貨、シェアリングエコノミー、自然資本)

The New Economy: A Living Earth System Model(ニュー・エコノミー:生きた地球システムモデル)
デビット・コーテン著
https://thenextsystem.org/the-new-economy-a-living-earth-system-model

Yes! Magazineの共同創設者で経済学者のデビット・コーテンは、現在の経済を「自滅する経済」と呼び、それがいかにマネー崇拝であるかを説明しています。グローバル企業を経済的・政治的中心に据えた制度を改め、人々のコミュニティに価値を置いた「生きた経済」が求められます。
(この考え方のキーワード:民主主義、グローバル市民社会)

佐々とも

 

Page Top