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Case.41

オリンピックで誕生した無料レストラン、ソーシャル・ガストロノミー運動を後押し

(Shareableより)

3年前のオリンピックをきっかけに始まった貧困層に無料で食事を提供する取り組みがますます活発化しています。「レフェットリオ・ガストロモティーバ(Refettorio Gastromotiva)」の取り組みは2016年のリオデジャネイロ・オリンピック直前に、イタリアの有名シェフ、マッシモ・ボットゥーラ氏(食品廃棄問題を扱う非営利団体「フード・フォー・ソウル(Food for Soul)」の創設者)とブラジル人シェフ兼社会起業家のデビッド・ヘルツ氏、ジャーナリストのアレ・フォーブス氏が協力して開始したプロジェクトです。

そのアイデアは、およそ1万8000人のアスリートなどが滞在するオリンピック村で余った食材を利用したレストランをつくり、貧しい人々に本格的な食事をタダで振る舞うというもの。「このプロジェクトは社会的包摂を念頭に置いている。食品廃棄問題について大勢の人に知ってもらい、希望を失った人々に希望を与えるものだ」とボットゥーラ氏はニューヨークタイムズ紙で語っています。

「レフェットリオ・ガストロモティーバ」は、ヘルツ氏が2006年に設立した「ガストロモティーバ※」のプロジェクトで、地球規模の問題とされている食糧不足と食品廃棄の両方の実用的な解決方法として生まれました。国連の食糧農業機関(FAO)のデータによると、世界で10人に一人が慢性的に栄養不足に陥っている一方で、毎年人の消費向けに生産される食料の3分の1が喪失・廃棄されています。

レストランの成功を足掛かりに、ヘルツ氏は「ソーシャル・ガストロノミー(social gastronomy)」と呼ばれる世界規模の運動を後押ししています。これは食糧と食事様式に注目し、栄養教育や食品廃棄物の削減、社会的不平等への対処、雇用の創出を推進する運動です。2018年には、「ガストロモティーバ」は穀物会社「カーギル」とパートナーシップを結び、この運動を展開する新たな拠点として、カンボジアのプノンペン、スイスのチューリッヒ、米国のミネソタ州ミネアポリスなどの11の都市で活動する予定です。各拠点では地元主導で計画を立てることになっており、リオ・オリンピックで設立されたようなレストランもプロジェクトに盛り込まれるかもしれません。

オリンピック開催から3年、「レフェットリオ・ガストロモティーバ」は今も精力的に活動を続けています。有料のランチの提供が始まり、その利益は無料のディナーに充てられています。またディナーの食材は協力組織から寄付された余剰食材を利用しており、毎日100食以上が貧しい人々に振る舞われています。

(佐々 とも)

※「スロー・フード」運動を推進し、飲食店などで働けるよう恵まれない人たちに教育・訓練を施している非営利団体(NGO)

※この記事は2019年2月にShareableに掲載されたMirella Ferraz氏の記事(How a restaurant born at the Olympics has strengthened the "social gastronomy" movement)の要約です。

 

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