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Case.43

ツーリズムで地域コミュニティ活性化を目指す、民泊プラットフォーム「Fairbnb」の取り組み

民泊はその地域ならではの異文化体験ができるなど新しい旅行スタイルとして、日本を含め、世界中に普及しています。そのなかで民泊を通じた地域活性化に取り組む、民泊プラットフォームFairbn.coopが2018年に設立され、翌年から世界屈指の観光地イタリアのヴェネツィアとボローニャ、オランダのアムステルダム、スペインのバルセロナとバレンシアで活動を展開しています。

FairbnbはCo-op(協働組合)として、ウェブサイト上で民泊の宿主と旅行者をつなぐ民泊プラットフォームです。既存の業者による利益優先のツーリズムとは異なり、地域のなかでお金を循環させる持続可能なツーリズムを目指しています。

Fairbnbのアイデアは、共同設立者のシト・ヴェラクルス氏がアムステルダムを住民にとってより良い都市にしようという取り組みのなかで生まれました。アムステルダムでは観光客の過剰な増加をともなうツーリズムが地元に悪影響を及ぼしています。そこでヴェラクルス氏は、大半の空き部屋が既存の大手民泊業者に登録され、賃貸料の上昇や立ち退きの問題が生じていると知り、自治体による民泊の法規制が不十分なことに目を向けました。

2018年の旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』の報告によると、世界でほかに少なくとも12の国と地域(日本やロサンゼルスなど)で民泊の法規制が設定されており、そこでは短期賃貸物件の件数が抑えられているといいます。ヴェラクルス氏は国や自治体の規制を順守するだけにとどまらず、もっと民泊によって地域コミュニティが恩恵を得られる方法を模索しました。

そして2018年、ヴェラクルス氏は欧州のほかの4都市で同じ志をもつ人たちと協力し、協同組合のかたちで民泊プラットフォームFairbnbを設立します。地域の人々による地域のためのツーリズムを目指し、主に次のような取り組みを掲げています。

  • 国や自治体の法規制を順守し、ツーリズムによる都市への影響を把握するためにデータを自治体と共有する一方で、会員のプライバシーを守る。
  • 地域に役立つプロジェクトをコミュニティが選び、得た手数料の50%をそのプロジェクトに投資する(ヴェネツィアで古代の造船所を教育施設として再生するプロジェクトなど)。
  • Fairbnbは、地域のために何かを決定する際に地域のパートナーと協働する個人や組織からなるコミュニティとなる。
  • 宿主1人につき、登録できる物件を1件に限定して、短期賃貸住宅の市場への影響を制限するために大きな業者を入れないようにする。

Fairbnbは、成長するツーリズムの恩恵を地域の人々にもたらし、地域の文化を守り、住民が安心して暮らせるよう、この活動を世界中に広めようとしています。

(佐々 とも)

 

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