
2025.12.24
ドーナツ経済学が明らかにする世界の限界
人間社会と地球環境を経済学に取り込む「ドーナツ経済学」を提唱した英国経済学者ケイト・ラワースは、2025年10月1日のネイチャー誌で最新の調査結果を共同発表しました。2012年と2017年に続き、3度目の更新になります。
今回明らかになったのは、2000~22年の間に、世界のGDPは2倍以上増加したものの、生活に必要不可欠なものが不足している状況はわずかに改善しただけでした。SDGs目標に沿って、2030年までに世界のすべての人の社会的ニーズを満たすには、今の5倍の速さで改善させる必要があること。また、環境については9分野中6分野で負荷の限度を超え、2050年までに地球システムを確実に安定させるには、今の2倍の速さで回復させなくてはならないことです。
さらに193カ国を「貧困国」「中所得国」「富裕国」のグループに分けて分析。所得水準が高いほど社会面での不足が改善され、環境面での超過は悪化していることが明らかになりました。
「富裕国」(世界人口の15%)では、社会面で不足している割合は全体のほんの2%ですが、環境面で超過している割合は全体の44%にもなります。一方、「貧困国」(世界人口の42%)では、環境面での超過は4%にとどまっていますが、社会面での不足は63%にも上ります。
こうした傾向や不平等は、経済成長に頼るのではなく、人間のニーズと地球の健全性を優先した再生と分配の経済活動に舵をきる必要があると改めて示しています。
(佐々 とも)
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https://www.nature.com/articles/s41586-025-09385-1





